久留米大学の柳川先生のセミナーに参加する機会がありました。
「リスクの評価と閾値」
放射線被曝リスク評価での閾値の問題を取り上げていました。
簡単にまとめるとLNTモデル(線形・非閾値モデル)に閾値を持つモデルを組み込むという話でした。
閾値というのは一定レベルの線量を被曝した場合に発症するという事であり、そもそもそれには個人差がある(放射線に対しての感受性は異なります)。そう考えて、閾値が変動する数値であると考えるのがミソでした。
ここは自分にもしっくりとする部分でした。
これによって何がわかるかというと、低線量においてもその線量の幅に応じて個人の閾値が変動するというモデルになり、平均値の閾値前であっても統計的には発症する可能性を持つ(逆に言えば、閾値より高くても発症しないという従来の観察をサポート)ことになります。そのため、低レベルでの線量と発症リスクの関係は漸増する(直線ではない)関係になります。
この式の興味深い点はより低い線量での安全性は確率論ですのでLNTモデルよりはやや高めに評価される一方で、閾値モデルとも現象としてはほぼ合うという点です。さらに、これまでの知見があるより高線量での被曝と発症の関係をモデルに当てはめることが可能であり、当てはまるのであれば低線量で全く(確率として)ゼロという事は言えないという事です。
もちろん、だから低線量が危ないとか安心だということではなく、モデルへの当て嵌めの仕組みとしての説明でした。
ただ、自分にはこれまで府に落ちなかった感受性の違いによる個人差が閾値につながるという考え方は新鮮でうなづける内容でした。